ツキノワグマと羅生門

お笑いライブの思い出などを書きたいです。

ワラネタFULLっていいよねという話

一口にお笑いライブと言っても色々な種類の物がありますが、僕は「色々な事務所の芸人さんが集まる、ネタと中MCだけのシンプルなライブ」が特に好きです。

主催者の方が各事務所や芸人さん個人にオファーして、芸歴も事務所もバラバラな出演者が集まってバーッとネタを披露する。1つのブロックが終わると箸休め的に出演芸人さん2~3組の中MCが入る(ライブ通してのMCがいる場合はその人が繋いだりする)。大トリのネタが終わったら、出演芸人が全組出てきて各自の告知タイムがあってライブ終了。

そのライブならではの企画がある訳でも無ければスペシャルゲストがいる訳でも無く、優勝者に賞金が出る訳でも無ければ来るべき賞レースの為に新ネタを何本も卸したりもしない。ここだけでしか聞けない様なオフレコトークも無いし、ライブ後にtwitterでライブ名を検索しても感想ツイートがあんまり見当たらない。そんな「お笑いライブ界の日常」みたいなライブが好きです。

素材そのままお出ししますみたいな、一期一会的でワンナイトラブ的なこういうライブには独特の気安さ・居心地良さがあります。それに、そんな通常営業なライブが予想を超えた盛り上がりを見せた時の幸福感と言ったら得も言われぬ物があるんです。最近行ったライブで好きな芸人さんがまさにそんな感じで大活躍していたので書いてみたいと思います。

6月7日に行われたK-PRO主催ライブ『ワラネタFULLvol.12』。K-PROのホームページによると「ベテランから若手まで、いろんな世代の多種多様なネタをドドドとお見せいたします!」という主旨のライブだそうです。K-PRO主催にしては明確なコンセプトがあまり無い、シンプルな構成。

エントリー制ライブの「ゲレロンステージ」で勝ち上がって来た新進気鋭の若手の人達やいわゆる「K-PROにハマってる」状態のギンギンな人達、そしてあまりK-PROに出ているイメージの無い渋めの人達等…出ている芸人さんの幅が広くて飽きが来ません。

後はやっぱりオープニングMC・中MCが楽しいです。主催者の方が選んだ2~3組が数分喋るだけの時間なんですが、特にテーマの無い繋ぎの時間という事で芸人さん達の力量が如実に解ったりその場限りの盛り上がる流れが出来たりとなかなか見逃せない時間です。

芸人さん達に意外な繋がりがある事をこういう所で知る事も多く、以前このライブに行った時はエル・カブキとジョイマンの中MCという激烈に熱い組合わせで、エル上田さんとジョイマンがNSC時代の同期という事を知って大変驚きました。久々に会った同期の昔を懐かしむ良い空気に思わずグッと来たものです。

今回のワラネタFULLはオープニングMCがマシンガンズとドリーマーズでとても嬉しかったです。やっぱりご贔屓の芸人さんは少しでも長く観たいのでこういう所に器用されて欲しいですし、オープニングを任されるという事は多少なりとも主催者の方にハマってるのかなと思えるので。ドリーマーズとのMCは以前も一度あって、その時も楽しかったのでその点でも安心感がありました。

マシンガンズはこういう「なんでもない時間」を盛り上げさせたらちょっと右に出る者はいないんじゃないか、と思います。特に後輩とのサシでの絡みに強い印象があります。ガンガンにイジっていくし、自分達もイジられやすい空気感があるので(恐いイメージのある二人ですが、ライブで観ると本当にニコニコ楽しそうにしている気の良いおじさんです)一方的な空気になりにくいです。今回もドリーマーズ坂本さんを「お前に聞いてねえよ!出っ歯!お前ばっかり喋るな!ブス!」とケチョンケチョンに貶す一方で戸矢さんには「かわいいね…無口なのが良いよね。ガリガリだね!」と持ち上げまくる流れを作っていました。この「片方を貶してもう片方を過剰に持ち上げる」パターン、結構やるんですが二人の意地悪さが出てて大好きです。

坂本さんの打てば響きまくる返しの強さ・戸矢さんのボソッと放つ一言の強烈さ(自分達を「豚と蟷螂」と例えられたお返しにマシンガンズを「豚と野良犬」と例えたのが秀逸)もあり、オープニングからライブはガンガンに盛り上がりました。

そんなマシンガンズ、ネタの出番は大トリ1つ手前でした。今日はなんのネタをやるんだろう?最近掛けたネタというと先月のエイトライブで披露した、スベりを超越した異次元漫才が脳裏を過ります。まさかあれをやるんだろうか…でも先日のライブではもう少し前にやっていた喧嘩漫才・羅生門漫才だったし、今回もそのどちらかかな?と予想していましたが、まさかの新ネタでした!

金持ちに対して思いの丈をがなりまくるキレ漫才で、「これぞマシンガンズ」と言いたくなる様な死ぬほどうるさくて口が悪くて舞台上に冷静な人が一人もいない、そして不思議と観る者の心を打つ最っ高の漫才でした…!!小さめの会場シアターミネルヴァにドッカンドッカン笑い声と拍手が響き、思わず西堀さんが「シモキタという場所がそうさせたよね…」とうっとり言う程の盛り上がり。ソウルがこもった数分間でした。

事務所ライブの月笑も近付いていましたし、まさかこのライブで新ネタをやるとは思ってもみなかったので凄くビックリしました。言っちゃなんですがこのライブで新ネタを掛ける理由もあまり無さそうですし。

でもそんな「日常」のライブだからこそ、リラックスして披露された新ネタが大爆発を巻き起こしたのかなと思います。こういう事があるからお笑いライブ通いはやめられませんし、どのライブがそういう予想を超えた素晴らしい場になるかが未だに全然判別出来ません。

エンディングでも西堀さんが上機嫌にたけしの物真似で前に出たり、盟友エルシャラカーニ清和さんやオープニングでイジり倒した坂本さんとガチャガチャ騒いだりしつつライブ終了(滝沢さんは奥の方でニコニコ微笑んでいました)。

客数も満員とは行かなかったみたいですし、多分お笑い界の歴史には刻まれない無数のライブの1つですが僕の心には素敵な思い出として深く深く刻まれました。

西堀さんはトークライブ等でよく「波風を立てたい」と言います。この姿勢はマシンガンズに共通する「ビックリさせたい」という思いに通ずるもので、滞りなく行われるべきコーナー趣旨説明中に滝沢さんがMCの頭を棒でぶん殴ったりするのにはこういった理由があるのです。

こういった行動により、二人にかかるとちょっとした繋ぎの時間がめちゃくちゃ楽しい場に変わったりして…そんな瞬間を目の当たりにすると本当にたまらないです(上手くいかずにとんでもない空気になる時もありますが、それはそれでチャーミングなものです。ファンとしては)

今回もそんな二人に大いに楽しませて頂いて、「日常」を「非日常」に変えてくれるマシンガンズの事を更に好きになった夜でした。(そもそもお笑いライブ自体が非日常の世界ではありますが…)

なんかマシンガンズの事ばっかり書いてしまいましたが他の芸人さんも全組面白い、とっても良いライブでした。ワラネタFULL、個人的に今K-PROライブで一番好きです。5GAPやジョイマンやイワイガワがゴリゴリの若者に混じって素晴らしいネタをやり、ベテランの凄みを見せつけたりして胸が熱くなります。もし出演者に一組でも好きな芸人さんがいたら、是非とも行ってみて下さい。

さて、マシンガンズと同じくらい大好きな新宿カウボーイがK-PROライブに死ぬほどハマっていないというのが私の目下の悩みなんですが、このライブになら出る可能性がありそうだと毎回アンケートの「出演して欲しい芸人さんはいますか?」欄にせっせと名前を記入しています。

K-PROライブには行くんだけどアンケートの出演して欲しい芸人欄には何も書かないというタイプであるそこのあなた、気が向いたら「新宿カウボーイが見たいです」と一言書いてみては如何でしょうか?ハゲた大柄なおじさんがキラキラした若者に混じって大暴れする、そんな「お笑いライブ界の非日常」を観てみたくはありませんか?

一緒に巻き起こそうぜ…俺達のジャイアントキリング!!!